ここでは、結婚ビザから、日本国籍の取得(=帰化)を考えてみましょう。

日本での暮らしが長くなり、将来のお子さんたちの養育などを考えたとき、日本国籍の取得を考える方も少なくありません。
結婚ビザを取得している方は、他の在留資格で在留している外国人よりも、帰化の条件が一部緩和されています。

とはいえ、帰化は日本国籍を取得して日本人になるわけですから、やはり厳しい審査があります。

ここでは、帰化に関する要件や一連の流れを説明します。

■日本人の配偶者の帰化の要件

1.住居要件

1)引き続き3年以上日本に住所を有していること
(一般外国人は3年以上就労している場合は5年以上、1年以上就労している場合は10年以上住所を有している必要があります)

※結婚してから3年ではなく、適正な在留資格で日本に3年住み、その後結婚すれば、要件を満たすことになります。
※「引き続き」については、1回の出国が3ヵ月以上・年間で通算150日以上日本を離れると、「引き続き」とみなされません。

2)日本人と結婚していて、婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所がある
海外で結婚して2年が経過し、その後来日して日本に1年住めば、要件を満たすことになります。

3)就労経験:不要です。
(一般外国人は1年または3年以上の就労経験が必要です)


2.行為能力要件

行為能力とは、平たく言うと独立して法律行為ができる能力です。
民法上、未成年者は行為能力が制限されていますが、帰化については未成年でも日本人と婚姻していれば、帰化申請ができます(一般外国人は20歳以上・母国の成年要件が必要)。

日本人の配偶者等である場合は、能力要件は不要となっています。


3.素行要件

納税等の義務を果たし、法律等に反する行為を犯していないこと

1)納税
住民税をきちんと納付していること。

※無職の場合は、扶養に入っていること。非課税証明書の提出が必要です。
※配偶者の納税証明書も必要
※同居の親族(父母兄弟)がいる場合は、全員の確定申告・納税証明が求められます。
  仮に同居の親族に納税していない方がいると、そのままでは帰化できません。

2)年金
国民年金が未納の場合は、直近1年分の年金を支払う必要があります。

3)法律違反
交通違反については、直近5年間で、軽微な違反数回程度なら申請できます。ただし、免停以上になると一定期間帰化申請できなくなります。
刑法、税法、出入国管理法などで違反があったり、罰金刑以上の罪を受けたことがある場合は、刑を終えて相当の年月が経過していないと、帰化申請できません。


4.生計要件

自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営むことができること。
つまり、経済的に自立して安定的な生活ができるかどうかが見られます。
おおむね月収18万円以上の収入があること。

※無職でも、配偶者に収入あればOK。
※貯金の額はあまり考慮されません。
※ローン・借金:収入の範囲内で返済していればOKです。
※自己破産した場合、経済的に回復しているか、7年経過していればOKです。

預貯金にいきなり多額の入金があったりすると、誰からなんのためにどのようにして入金されたお金なのか、返済の計画はどうなっているのかなど、細かく聞かれます。
これは、自立して安定的な生活ができるのかと直結するところなので、かなり審査官の注意が注がれるところです。


5.喪失要件

日本は二重国籍を認めていないので、日本国籍を取得することで、本国の国籍を離脱できるかがチェックされます。
※未成年者や兵役を終えないと帰化できない国がありますが、韓国の場合は大丈夫です。


6.思想要件

暴力団・テロリストなど日本の破壊をもくろむ団体の構成員でないこと


7.日本語能力要件

日本人として生活していくための日本語能力があるかどうかが問われます。
面接の際に日本語テストがあります。おおむね小学校3年生程度の日本語力が必要です。

■帰化申請の流れ

帰化申請手続きが、他の在留資格の取得の手続きと大きく異なるのは、必ず本人への面接があることです。
また、審査を行うのは、入国管理局ではなく、法務局です。

1.書類の収集

帰化の特徴の一つが、膨大な申請書類の提出が必要になることです。
横積みで5~10cmの厚みになることも珍しくありません。
韓国人配偶者の出生から今までの人生の歩みを裏付ける全ての書類を集める必要があります。


2.受付予約

書類を収集したら、現在お住いの地域を管轄する法務局に電話して、受付の予約をします。


3.受付

予約した日に法務局を訪れて帰化申請書類を提出します。

書類提出では、審査官が提出された書類をチェックし、必要な書類の漏れや抜けがないかを確認します。
この時点で、書類に不備がないと形式的に判断されると、受付が受理されます。
このとき、「宣誓書」(法務局の審査官が持参)して、宣誓するか聞かれますので、宣誓します。
宣誓書の文面は以下の通りです。

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私は、日本国憲法及び法令を守り、定められた

義務を履行し、善良な国民となることを誓います。

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この書類に日付と名前を記載することで、宣誓したことになります。
また、受付証が交付され、受付番号と担当官の名前が伝えられるので、忘れないようにしましょう。


4.面接

受付が受理されて3か月ほどで、法務局から面接に来るように連絡が入ります。
面接では、おおむね次のような内容を聞かれます。

1.これまでの経緯
2.仕事の内容
3.日本と韓国の家族構成
4.結婚した経緯
5.法令順守状況
6.納税・年金支払い状況

帰化の動機、申請書に書かれている内容について確認されます。
また、生活実態を確認するため、法務局で面接したあと、実際に自宅を訪問して生活状況を確認する場合もあります。
さらに、日本人配偶者の方にも面接がある場合があります。
この場合は主に夫婦関係や日常生活について質問されます。

面接の目的は、書類と本人の口述が合致しているかを確認することと合わせ、本人の日本語能力もチェックされます。

帰化の面接にあたっては、以下の点に注意しましょう。
・提出した書類はよく読んでおく
・聞かれた内容については、ウソ偽りなく正直に答える
・身だしなみを整えて、清潔な身なりで面接に行く


5.許可/不許可

面接後、許可が下りるまで再び数か月(おおむね半年ほど)かかります。
申請から許可まで、7か月~1年程度かかります。
帰化申請は、他の在留資格の審査の中でも、最も長く時間がかかる手続きです。

もし、この間に、現在の結婚ビザの在留期間が切れる場合は、結婚ビザの更新申請をする必要があります。

■帰化申請提出書類

1.帰化許可申請書 

申請者の氏名、国籍、生年月日及び出生場所、父母の氏名、帰化後の氏名及び本籍などを記載し、署名・押印後、写真(5×5)を貼り付けて提出します。 


2.帰化の動機書(自筆)

なぜ日本国籍の取得を希望するのか、自筆で記載します。


3.宣誓書


4.履歴書

出生から現在までの学歴と成績、仕事の経歴、出入国履歴や、保持している技能・資格などを記載します。

・最終学校の卒業証明書または在学証明書(成績証明書)
・自動車運転免許証の写し
・運転記録証明書
 ※各都道府県にある自動車安全運転センターで発行してもらい、過去5年間の交通違反歴を調べます。
・技能資格証
・在留歴を証する書面
※法務省個人情報保護係宛に個人情報開示請求を行い、日本に入国した時から申請時までの在留資格に係る許可・不許可の履歴および法定の在留期間における出入国の履歴を取得します。


 5.家族関係を証明する書類

韓国人配偶者の親族の住所、氏名、年齢、職業、交際状況などについて記載します。
※親族とは、父母、兄弟姉妹、配偶者、子供、内縁の夫や妻、婚約者 (父母、兄弟姉妹、配偶者、子供に関しては死亡者も含む)

・住民票(世帯全員の氏名が記載されたもの)
・韓国人配偶者の名前が記載された日本人配偶者の戸籍謄本
・家族と一緒のスナップ写真
・親族の概要
・自宅の内外の写真および付近の略図
※過去3年以内に引越しをされている場合は、前自宅付近の略図も作成。
・賃貸物件にお住まいの方は賃貸契約書の写し


 6.職業および生計能力を証明する書類

韓国人配偶者の現在の収入や支出の家計状況や、負債状況、保有している財産状況などを記載。

<会社員等給与所得者の場合>

・事業の概要
・在職証明書、給与証明書、社員証の写し
・勤務先(事業所)付近の略図
 ※過去3年以内に転職している場合は、前の勤務先についても記載。
・住民税納税と課税証明書(各過去1年分)
・源泉徴収票

 <会社経営者・役員の場合>
・事業の概要を記載した書面
 ※韓国人配偶者が会社を経営している場合や親族が経営している会社の取締役である場合は、事業の概要を記載して提出。
・事業所付近の略図
 ※韓国人配偶者が会社を経営している場合や親族が経営している会社の取締役である場合は、事業所付近の略図を作成。
・法人登記簿謄本
・営業許可証明書、免許の写し
・在勤・給与証明書(会社の社長や役員は自分で証明書を作成します)
・確定申告書(控)の写し
・決算書の写し
・決算報告書(貸借対照表、損益計算書の写し (過去3年分))
・法人税所得金額証明書
・法人税納税証明書その1、その2 (過去3年分)
・法人事業税納税証明書 (過去3年分)
・源泉徴収簿の写しと納付書の写し (過去3年分)
・法人消費税納税証明書 (過去3年分)
・法人市県民税納税証明書(過去1年分)
 ※経営者個人の所得税などの納税証明書と、法人に関する法人税などの納税証明書の2種類が必要。
・会社の土地登記簿謄本、建物登記簿謄本

 <自営業者の方>
・事業の概要を記載した書面
 ※韓国人配偶者が個人事業主である場合は、事業の概要を記載して提出。(会社の売り上げ、利益率、負債、取引先の記載等について)
・事業所付近の略図
 ※申請者の方が個人事業主である場合は、事業所付近の略図を作成。
・確定申告書の控えの写しと収支内訳書の控えの写し (過去3年分)
・源泉徴収簿の写しと納付書の写し (過去1年分)
・所得税納税証明書その1、その2 (過去3年分)
・個人事業税納税証明書 (過去3年分)
・消費税納税証明書
・住民税納税(非課税)証明書 (過去1年分)
・総勘定元帳(毎日の売上、仕入、経費のわかるもの)
※修正申告があるときはその控えを提出。

<無職の方>
・非課税証明書(過去1年分)
・日本人配偶者の課税証明書及び納税証明書、源泉徴収票

<学生の方>
・在学証明書


 7.資産を証明する書類

・預金残高証明書(預貯金通帳の写し)
・不動産をお持ちの場合は、土地・建物の登記事項証明書(個人所有、会社所有)
・有価証券保有証明書
・賃貸物件にお住まいの方は賃貸契約書の写し


 8.現在の韓国国籍関連書類

・基本事項証明書(日本語訳要)
・家族関係証明書(日本語訳要)
・婚姻関係証明書(日本語訳要)
・パスポートの写し

■帰化申請が不許可になったら

帰化申請は、一度不許可になったら、数年間は許可されないといわれています。
そのため、上記のような申請要件を満たしていないと判断される場合は、きちんと要件が整ってから申請するようにした方がよいでしょう。

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